理念とは?意味と効果と他の企業の理念一覧をまとめました

理念とは何か?

理念とは

①〔哲〕(Idee ドイツ)プラトンのイデアに由来し、感覚世界の個物の原型である非感覚的な永遠の真実在。

②俗に、事業・計画などの根底にある根本的な考え方。「創業の―」

出典:広辞苑より

①の「理念」とは、プラトンが説いたイデアや観念に関する学説の要素ですが、多くの方が「理念」と聞いて思い浮かべることは、②の企業理念や経営理念といった会社や組織運営に関して使われるビジネス用語の認識が強いと想定されますので、今回は、②の意味の「理念」について主に解説していきたいと思います。

ビジネスや経営で使われる
「理念」とは「物事に対して“理想“とする”概念“」のことで、
「こうあるべき」というベースの考え方を指します。

企業では、会社の方針や指針・社員に求める像などを表現する時によく使われます。

また企業で使われる理念は、ビジネス用語で時折「Philosophy(フィロソフィー)」とも言われる場合があります。

さらに、漢字に分解すると、その意味が深くわかります。

「理」は「ことわり」と読む漢字。意味は「物事の筋道。道理」です。

「念」は「おもい」と読む漢字。意味は「常に心の中を往来しているおもい」

二つを合わせると、「常に心の中にある、物事の筋道」といった意味となり、常に心の奥にある、変わることのない想い(念)が理念です。

そのため、ご自身の心の中で一番大切にしていることを言葉に明文化したものが「理念」と呼ばれるのです。

企業における理念の重要性を、野球部で例えてみます。

では、なぜ、理念は企業に必要なのでしょうか?

それをある高校の野球部の事例で見てみましょう。

あなたは、野球部のキャプテンだとします。

その野球部にこんなA~Cくんというメンバーがいるとしましょう。

Aくんは「プロ野球選手になりたいから、野球部に入っている」
Bくんは「中学も野球をしていたから、その流れで野球部に入っている」
Cくんは「仲良い友達が入るから、野球部に入っている」

【画像】理念の記事_動機の違い

ある日、試合で致命的なエラーにより、チームは負けてしまいました。

試合後、キャプテンのあなたが皆を集めて、「もっと守備の練習を徹底しよう!」と言ったとします。

3人はどんな反応をするでしょうか?

Aくんは「そうだ!もっと強くなろう!」ときっと思うでしょう。
Bくんは「まぁやるけど、そこまで熱血にやらなくてもいいのでは?」と思うかもしれません。
Cくんは「そんなハードな練習には耐えきれない」と思い、部活を辞めてしまう可能すらあります。

つまり、人が複数人集まった場合は、複数の価値観・考え方が存在するのです。

この時に、全員で「何のために(目的)」や「どこを目指して(ゴール)」などの共通の目標が重要になってきます。

甲子園常連校は、ほとんどの部員が「甲子園に出る」と共通の想いを持っているから強いのです。

そして、それは野球部として正式に掲げているから、その想いが全部員に浸透しているのです。

では、あなたの会社ではそういった共通の想いは全スタッフに浸透しているでしょうか?

そもそも掲げられているでしょうか?

全ての企業に、理念が必要なわけではない。

では、企業において絶対に必要なのか?

結論から言えば、NOです。

上場を目指さないのであれば、
「企業において、理念は重要ですが、必須ではありません。」

※株主・投資家は「理念」を投資判断の重要指標に置かれるので、上場を目指すのであれば、必須となります。

企業では、下記の条件が揃う場合は理念が存在しなくても十分に機能します。

①経営者にカリスマ性があり、経営者の決断に全従業員が統一して動ける
②従業員一人ひとりの仕事に対する意欲が高く、生産性が高い
③全従業員が会社の重要事項を察知し、統率を保てたまま自発的に行動できる
④従業員の定着が高く、入社後の即戦力化が期待できる。

「そんな会社が存在するのか?」と疑問を持たれるかもしれませんが、
企業を創業した当初タイミングでは、この条件が揃っているケースがあります。

創業メンバーの場合は、ビジネスやサービスへの可能性を感じて参画しているため
「何のために(目的)」や「どこを目指して(ゴール)」などの理念の要素が存在しなくとも、
目標数字や計画だけが存在すれば機能する状態を作れるのです。

理念は、ある方が越したことはない重要事項ですが、必須条件ではありません。

ただし、従業員数が増えて、上記の4つの要素が崩れ始めてきた時に、理念が必要となる時期が訪れます。

経営者の求心力の低下や従業員の成長スピードの鈍化、従業員の定着率の悪化などが発生した際に、理念を設定する必要性が高まる傾向にあります。

理念は3つ側面で重要

では、企業理念にはどのような目的や効果があるのでしょうか?

企業理念の目的には、主に3つの側面を持ちます。

□ 経営者本人における重要性

経営者にとって、理念が重要な理由は、経営者が判断をする立場だからです。様々な判断を下すことを役割である経営者にとって、理念は経営判断の軸となります。

経営が順調である時よりも、問題が発生したり、判断に迷ったりした時に理念は役立ちます。そして方向性を間違えずに基本に戻ることができるのです。

□ 社外における重要性

社外における理念が重要な理由は、経営は社外の関係性で成り立っているからです。

ここにおける社外とは「顧客」「協力業者」「地域」「求職者」「株主・投資家」のことを指します。

会社としての想いや方向性を社外に発信することで、社外の人に会社の存在意義を認知してもらい、また知られたことによる責任感が社内に生まれます。

□ 社内における重要性

社内における理念が重要な理由は、組織は考え方や価値観の違う人の集まりだからです。多様な考え方が存在する中では、各自がバラバラに動いてしまうことは当然です。しかし、会社の基本的な指針や方向性を浸透させることで、従業員が統一した価値観で判断できるようになり、強い組織を作ることができます。

理念で期待できる効果・メリット

理念を浸透させることで、得られる効果は以下のようなものがあります。

□ 社外(協力業者・顧客・株主/投資家)面

・会社の存在意義を公言することで、企業の信頼度を高められる

□ 社外(採用)面

・同じ志・方向性に共感した人材を獲得できる

・働きやすさだけでなく、仕事の意義や働き甲斐を重視した人材を獲得できる

□ 社内(経営者自身)側面

・「何のためにこれからも頑張り続けるのか?」の経営者のモチベーションを発見できる

・自分の大切にしている考え方を社員に伝えやすくなる

□ 社内(人材育成)面

・自社の方向性や基準を伝え、社員にモチベーション(働く意義)を与えられる

・従業員のベクトルを統一させることで、一体感を生み出せる

・経営者が望む組織風土や企業文化をつくることができる

「企業理念」と「経営理念」の違い

理念でも、よく「教育理念」や「行動理念」や「経営理念」など複数の言葉が存在します。

これにはどのような違いがあるのでしょうか?

簡単にいえば、「●●理念」の「●●」に関しての軸と判断すれば、わかりやすいと思います。

教育理念=「教育」に対しての「根本的な考え方」=どう教えるべきか?
行動理念=「行動」に対しての「根本的な考え方」=社員の行動はどうあるべきか?
経営理念=「経営」に対しての「根本的な考え方」=経営をするにあたってどうあるべきか?

などです。

その中で、特に多くの人が疑問に持つのが「企業理念と経営理念の違い」です。

こちらは少し詳しく解説します。

よく企業理念と経営理念は同義語で認識されることが多いのですが、厳密には少し違いがあります。

企業理念は、会社としての大切にしたい考え方
経営理念は、経営者として大切にしたい考え方

のことを一般的には指します。

□ 企業理念

企業理念は、会社として最も重要にする考え方であり、存在意義や目的・価値観を表明したものですが、主に創業者によって作られ、企業が存続する限り、継続的に掲げ続けられる傾向があります。ただし、「基本理念」や「法人理念」などの表現で使われることもあります。

□ 経営理念

一方で経営理念は、経営をする上での会社の存在意義や目的・価値観を表明する点は企業理念と同じですが、あくまで経営者個人の考え方であり、「自分が経営者として、この軸で進めていきたい」と明文化したものを指します。そのため、経営者が変わった際や時代のニーズが変わることで変更する場合もあります。

□ ほぼ同義語と考えても問題はない。

ただし、厳密にはこのような違いはありますが、多くの企業ではこのように細かく使い分けられているわけではありません。

そのため、「ほぼ同義語」と考えてもらっても構いません。
※広辞苑には「経営理念」は存在しますが、「企業理念」という文言は存在しません。それほどの違いの差だとご認識ください。

傾向としては、創業者が掲げた理念は残しておきたいが、2代目経営者がご自身で改めて経営する方針を掲げたいという時に、「経営理念」として掲げ直すことがあります。

「ビジョン・ミッション・バリュー」との違い

では、さらによく聞く「ビジョン」や「ミッション」・「バリュー」は何が違うのでしょうか?

3つに関しては、以下のように考えていただけるとわかりやすいと思います。

「ミッション」とは、果たしたいと考えている使命(目的)
「ビジョン」とは、ありたい・なりたいと考えている姿(ゴール)
「バリュー」とは、行動や意思決定の指針とする考え方(価値観)

なぜ、このように細かく分かれているのでしょうか?

それは、組織に所属する側(社員)にとって、この3つの要素がそれぞれ違うだけでどこに所属するのかの判断軸が変わるからです。

□ 高校の野球部でもう一度考えてみましょう。

A校とB校の野球部は、共に「甲子園で優勝」を掲げているとしましょう。

これはビジョンです。

では、ミッションはどういうものでしょうか?例えば

A校は「地元の活性化」
B校は「我が校からプロ野球チームに輩出する」

これだけで、その野球部で野球をする目的が変わります。

つまり、ミッションとは「目的」なのです。

また、バリューは何になるでしょうか?例えば

A校は「自主性を重んじたプレーで勝つ」
B校は「徹底的なスパルタ教育で勝つ」

ここで、野球部に所属する上での姿勢やスタンスが変わります。

バリューとは、「軸や価値観」なのです。

【画像】理念の記事_ミッション・バリューの違い

では、ある一人の野球青年が、甲子園を目指して入部を考えた時、
同じ「甲子園で優勝」というビジョンを掲げたA校・B校のどちらでもいいかと言うと、決してそうではありません。

なぜするのか?どのような軸で進むのか?も選ぶ大きな判断軸になります。

このように、理念と言っても、「目的」と「ゴール」と「価値観」がそれぞれ違うだけで
経営や人材育成は大きく変わってくるのです。

そしてもし、これらの3つともが存在していない野球部だったとしたら、
この野球部では、各自が自分の価値観や相手への勝手な期待で、プレーやコミュニケーションを取ることになるでしょう。

そうすれば、ミーティングをしていても、相容れない人とは話が合わず、
何を決めるにあたっても、前提が違うと、やりづらくなります。
結果、「この野球部では合わないな」と辞めていく人もいるでしょう。

今回は野球部で例えましたが、企業においても企業規模が大きくなるほど、この3つの要素の違いが大きな影響を及ぼしやすくなるため、特に大手企業では細かく設定している場合が多いのです。

□ 理念とビジョンの違い

またビジョンと理念の違いとしては、理念は目的であり、ビジョンは目標であるとよく例えられる傾向があります。
※企業理念や経営理念は、「ミッション」や「バリュー」の同義語として掲げている企業もあります。

ただし、ミッション・ビジョン・バリューの3つが全て揃っていないといけないわけではありません。

もしこれから理念を掲げたいという場合は、まずはご自身のこれまでの人生を振り返り、大切にしたい価値観を抽出することから始めてみることを推奨します。

理念は“掲げる”よりも、“語れる”ことで会社を強くする

これまで理念の定義をいろいろと伝えましたが、定義をそこまで重視する必要は、実はありません。

大切なことは、正確に掲げるよりも、きちんと社員が共感してくれること、そして経営者・経営幹部が高い熱量でその理念を伝えきれる内容かです。

例えば、「地域に貢献する」という文言は、多くの企業の理念で使われます。
この想いや文言自体はとても素敵ですが、重要なのは“その背景”です。

「なぜ、そこまでして、この地域に貢献したいか?(Why)」
「『地域に貢献』とは、どんな地域を作ることなのか?(What)」
「どのような形で、地域が良くなっていくイメージなのか?(How)」

などです。

どれだけ綺麗な言葉を掲げても、そこに強い想いがなければ、伝わりません。
伝わらなければ、心に響かず、心に響かなければ、人は動きません。

□ 理念を掲げる上で最も気を付けなくてはいけないこと

それは当たり前すぎることは相当な工夫をしないと、人には響かないと自覚することです。

例えるなら、「世界を平和にする」ことに対して、日本では反対する人はほぼいないでしょう。
しかし、具体的に世界平和の実現にご自身の人生をかけて動いている人は、あなたの身近に何人いるでしょうか?

また「感謝」という言葉ですら、誰しもが感謝は大事だと思いつつ、日ごろから「ありがとう」の一言が言えないことで、苦しんでいる人もいるわけです。

つまり、今の私たちは素敵な言葉を日常的に浴びすぎて、言葉に麻痺をしている状態なのです。
だからこそ、重要なのは理念の文言よりも、その背景であり、特に「Why(なぜ)」がどれだけ社員に伝わるかなのです。

その第一歩目は、経営者や経営幹部陣が、その理念を掲げる理由「Why」を社員に響くように伝えられるかどうかにかかっています。

もちろん、理念には「社外からの見られ方」の側面もあります。
しかし、組織をまとめるために作られるのであれば、まずはご自身の内側から出てくる想いや社員と共有したい考え方を言葉にまとめることに注力することです。

そうすることで、社員は理念をもとに自身の仕事の在り方を考えられるようになり、社内で協力し合える強い組織を作ることができます。

もし、理念の作り方や見直し方等で不明点があれば、ご相談ください。

有名企業の理念一覧

参考までに有名企業の理念の一覧を掲載します。

なお、このコーナーでは、便宜上理念やミッション、ビジョン、バリュー等の明確な区別をつけずに企業が理念の要素としてコーポレートサイトに掲載されているものをそのままご紹介します。

Amazon.com Inc

企業理念
「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」

出典:https://www.amazon.jobs/jp/

Alphabet Inc. (Google)

Google が掲げる 10 の事実
1. ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
2. 1つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
3. 遅いより速いほうがいい。
4. ウェブ上の民主主義は機能する。
5. 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
6. 悪事を働かなくてもお金は稼げる。
7. 世の中にはまだまだ情報があふれている。
8. 情報のニーズはすべての国境を越える。
9. スーツがなくても真剣に仕事はできる。
10. 「すばらしい」では足りない。

出典:https://www.google.com/about/philosophy.html

京セラ株式会社

社是
“敬天愛人”
常に公明正大 謙虚な心で 仕事にあたり
天を敬い 人を愛し 仕事を愛し
会社を愛し 国を愛する心

経営理念
全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること

出典:https://www.kyocera.co.jp/company/philosophy/index.html

株式会社サイバーエージェント

Vision

21世紀を代表する会社を創る。

出典:https://www.cyberagent.co.jp/corporate/vision/

株式会社ZOZO(元株式会社スタートトゥデイ)

企業理念
世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。
Be unique. Be equal.

出典:https://corp.zozo.com/about/philosophy/

トヨタ自動車株式会社

基本理念
1.内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
2.各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
3.クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
4.様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
5.労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
6.グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7.開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する

出典:https://global.toyota/jp/company/vision-and-philosophy/guiding-principles/

日本航空株式会社(JALグループ)

企業理念
JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、
一、お客さまに最高のサービスを提供します。
一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。

出典:http://www.jal.com/ja/outline/philosophy.html

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